プロレスを見ていると、ちょっと乱暴な場面に出くわすことがあります。初めはなかなか「これは反則なの?違うの?」の判断がつきにくいものです。
プロレスにける「反則」は少し特殊で、初めは混乱するかもしれません。
この記事では、反則の定義から始めて、プロレスの魅力が倍増する「反則の楽しみ方」まで、じっくりお伝えします!
概要:プロレスにおける「反則」とは?
まずは、プロレスにおける反則について、教科書的な理解を簡単にお伝えします。プロレスにおける反則は、
危険な行為や試合を壊すような行為に対して取られるペナルティ
です。
反則行為に対して取られる措置は、大きく分けて3つです。
【反則に対する措置1】5カウント
まずは「5カウントを取られる」反則です。レフェリーが5カウント数えるまでに反則行為をやめなければ退場となります。
たとえば以下のような悪事が、5カウントを取られる反則です。
- ロープブレイクをしない
- 四方に張られたロープに選手の体が付いた場合は、両選手の接触を解かなければならない。
- チョーク
- 首しめ!いけません!
- サミング・噛みつき
- サミングとは、相手の目を引っ掻いて視界を奪う行為。
- ちょっと引っ掻く程度なら「ちょっと叱られる」に該当する。
- 髪の毛を引っ張る
反則は他にもありますが、レフェリーがやや怒りながらカウントを数え始めたら「反則なんだな」と思っていただいて大丈夫です。
なお、ほとんどの場合、選手は4カウント目までで悪事の手を止めます。
【反則に対する措置2】一発退場の反則
一発退場は、陰惨な試合結果、いわゆる「バッドエンド」をもたらすような、悪質な行為に対して取られます。主な例は以下の通りです。
- 凶器攻撃(竹刀・メリケンサック)
- 関係のない選手乱入
- ローブロー(いわゆる金的。相手の局部を攻撃すること。)
プロレスにおいては、どんなものも凶器になります。持参の凶器に加え、リング下のパイプ椅子や机、中継カメラの配線までなんでもござれです。試合開始・終了を伝えるゴングまで凶器になるのだから、羅列は無理です。
これらの反則は、一見なかなかお目にかかれないように見えるかもしれません。しかし、のちに詳しくご紹介するとおり、プロレスでは「レフェリーが見ていなければ」反則を取られません。
【反則に対する措置3】ちょっと叱られる反則
「ちょっと叱られる」反則行為は、悪質な場合5カウントが取られますが、基本的にレフェリーにちょっと叱られるだけです。
主な例としては、「ナックル」。いわゆるグーパンです。一回のパンチに5カウント数えることなど無理なのだから、ちょっと叱るくらいしかありませんね。ここになってくると、割と悪役以外も使います。
プロレスの反則の特殊な点
この章では、プロレスの反則独自の特徴をお伝えします。プロレスの反則は、プロレスをエンターテイメントとして昇華するために必要な要素です。
レフェリーが絶対ゆえ、反則が許される
一見どのスポーツもレフェリーが絶対だと思われがちですが、実は違います。スポーツには、誰も侵犯できない確固たる「ルール」があります。レフェリーが確認できなくとも、のちにビデオ判定によって反則となれば「反則」。つまり、スポーツにおける反則は、絶対的視点から下されます。
一方プロレスは、基本的には「レフェリー」という1人の人間によって反則が取られます。レフェリーの目を覆ってしまえば、試合で起こっていることは見えなくなります。
前章でご紹介したように、プロレスを見ていると、「一発退場」に該当する反則行為に、実は結構出くわします。
ヒールレスラーは、「セコンド」をつけていることがあります。ヒールレスラーに同伴する「セコンド」の主な業務は以下の2点です。
- レフェリーの目を見えなくする
- レフェリーの見えないところで悪事を働く
セコンドは試合中レフェリーを呼びつけて捕まえておくんです。するとリング上では、どれだけ多くの観客が居ようとも無法地帯。
凶器を持ち込んでみたり、あらかじめセコンドから用意された椅子を使って殴ってみたり、ローブローをかましてみたり…
レフェリーが絶対だからこそ、反則が許される余地があるのが、プロレスの特徴です。
観客がメタ的に試合を見られる
先ほどもお伝えした通り、プロレスには絶対的視点から下される反則は存在しません。
では、絶対的視点を持てるのは誰でしょうか。そう、私たち観客だけです。
プロレスの観客は、レフェリーも相手選手も気づかない反則行為を踏まえて試合を見られます。
これは、映画を見ている時のような高揚感を与えてくれるシステムです。
悪役の狡猾な会議の様子と、罠とは知らずに現場に直行するヒーローが交互に映される映画を見たらどうでしょう。「気づいて!」「悪い奴らに負けないで!」と祈りを込めて画面を見守りますよね。
反則をするプロレスラーの特徴
ヒールレスラー(悪玉)
当然といば当然だが、リング上で悪役となるレスラーは反則王です。
ヒールレスラーの入場時に注意して見てみると、狂気として使えそうな武器を持った選手がいるはずです。
ヒールレスラーがチャンピオンになってベルトを持っている時は要注意。彼らにとってはベルトも狂気候補です。
ヒールレスラーは、どんな手を使っても勝利に拘泥する、ある意味素直な戦い方をします。ヒールレスラーがどのように知恵を使ってレフェリーの目を盗むかを見るのも、プロレスの醍醐味でしょう。
感情が昂りがちなベビー(善玉)
ヒールレスラーが悪事を働けば働くほど輝くのは、「ベビー」と言われる善玉レスラーです。ベビーは、決して卑怯なことはせず、正々堂々と戦う姿が高貴にうつります。
とはいえ、ベビーも一枚岩ではありません。熱烈で、ついつい興奮してしまう善玉選手なら、「ちょっと叱られる」程度の反則ならしてしまうこともあります(まぁ、ちょっと叱られる程度なのでいいか…)。
顕著なのは、新日本プロレスの「ジュース・ロビンソン」選手。
表情豊かで悪い奴らを倒していく姿は、さながらカートゥーンの主人公のような選手です。ついついナックル(グーパンチ)が出てしまうのもその文脈で十分理解できます。
キレたベビー
上記のベビー選手と近い概念ですが、少し特殊なストーリーを生む存在なので、こちらも紹介しておきます。
プロレスは、1試合の中でストーリーが存在します。悪事を働いていたヒールに対し手を焼きながらも対応していたベビーが、終盤ついにキレる!!
これはワクワクしないでしょうか。みんなのヒーローが、我を忘れて手段を選ばなくなる。これは、ストーリーの中の美味しいスパイスです。
ここまでお話しして来た通り、プロレスにおける反則は、試合のスパイスであり、選手のアイデンティティ確立のために必要な装置なんです。
プロレスが楽しくなる反則の受け取り方
レフェリーの目の欺き方を楽しもう
反則行為時にレフェリーの目を欺く方法はたくさんあります。
小さいところでは、先ほどもお伝えしたような、リング上の井戸端会議イベント。
大きなマッチ(例えばベルトがかけられているタイトルマッチなど)では、相手選手ごとレフェリーを押して倒してしまうこともある。
すると2、3分は無法地帯です。選手ではないのに技を受けることもあるレフェリーさん、お疲れ様です。
他にも、リング外での反則行為も、レフェリーの死角をつくように反則が繰り広げられています。リングは、地面よりも高く設置されており、その関係で死角が生まれます。レフェリーから見えないところでコソコソと痛めつけるんです。しかしばっちりカメラには収まっているし、観客からは丸見えです。
巧いいヒールレスラーは、レフェリーの目の欺き方が上手です。
新日本で言えば、CHAOSというユニットの「矢野通」選手が、その辺りの采配がとても上手です。矢野選手の試合を見るときは、瞬き厳禁で反則の深さを味いましょう。
反則がもたらすストーリーを紐解こう
反則込みで楽しめるのは、プロレスの大きな魅力です。贔屓の選手がいじめられて悲しい気持ちになるかもしれません。
そんな時、その反則がどんなストーリーを生むかを考えながら見ると、少し楽しくなるかもしれません。
たとえば、何度も鉄パイプで選手を襲ってくるヒールレスラーに、ベビーレスラーが手を焼いていたとしましょう。こんな風に考えてみると楽しいかもしれません。
- ベビーがついに怒って、鉄パイプを奪って捨てちゃうかも
- 鉄パイプを振りかぶった隙をいつか突くかも
- むしろこの鉄パイプを使って、ベビー側も闇おちしちゃうかも!?
プロレスの妄想は自由です。ぜひ反則の調理方法を楽しんでください。
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